「最終的には出会い」組み木絵作家:中村道雄さんインタビュー

「最終的には出会い」

 

「組み木絵」というアートのジャンルを知っているだろうか。 知らないという人が多数だと思う。 なぜならそのジャンルの芸術家はまだ世界で一人しかいないからである。 その一人というのが今回インタビューさせていただいた中村道雄さん、組み木絵の創造者 である。

 

 

こんにちは、今日はよろしくお願いいたします。

ーこんにちは。よろしくお願いします。

 

まず、「組み木絵」というものについて教えていただいてもいいですか?

ー「組み木絵」っていうのはもともと日本では工芸品として知られていた、 「象嵌(ぞうがん)細工」っていうものを改良したものですね。本来は石とか貝を埋め込 んで、細工をしていくといったものなのですが、「組み木絵」では、それを木で、そして 絵に特化してアートとしてやってるって感じです。そして何よりの決め手は「面取り」で す。

 

「面取り」というのは?

ー象嵌細工というのは、基本的に細工なので絵として作るというのはほぼない のですが、「組み木絵」では、絵として作るにあたって、「面取り」という、組み合わせ る一つ一つの木を丸みを帯びるように加工しているんです。それは本来象嵌細工の世界で は邪道なことなんですけど、僕はそんなこと何も知らずに始めたんでね(笑)今では「組 み木絵」の大事なエッセンスになってますよ。

 

どのような経緯で組み木絵を始められたのか伺いたいんですけども。

ーもともとイラストレーターをフリーでやっていたんです。いろんなタイプの 仕事をしていましたね。NHKのアニメの絵を描いたり、CDのジャケットを描いたり。自 分、ヨガとかやっていたんですけど、その自然観とかと照らし合わせて世界をみたとき に、人間が、そのエゴが、まずい方向に行っているなあって、ふと思ったんです。それを 問いかけたいなあと思って。人間だって自然の一部じゃんって、そんなことをね、訴えか けたいなあって思ったんです。そこで、ゴミを使って絵本を作ろうって思ったんです。当 時イラストレーターはみんな絵本をしたがっていたんですよね。けどできなかった。大家 の画家とかがやっていたから。自分は、子供だけが読む絵本じゃなくて、大人から子供 まで、みんなが楽しめて、自分の想いを伝えられる絵本を作ろうと思ったんです。そんな 時にふとしたことから木と出会いまして、ゴミじゃなくてこの自然の材料を使って絵本を 作ろうと。これが「組み木絵」の一番最初のスタートですね。

 

ふむふむ、最初は絵本からのスタートだったわけですね。そこからどうしたん ですか?

ー最初にその構想を固めた後で、バーっと下絵を描いて、仕事として木を扱っ ている人にそれを見せたんです。自分は木のことは何にもわかんなかったんで(笑)そし たらその人、「いいね」って言ってくれて、一緒にやっていこうとしたんですよ。でも、 あるとき突然「技術的に無理」って言われ、降りられたんです。

 

えー(笑)

ーそうそう、でもね、自分でのこぎり買って、気合で形にしましたよ。下絵の 構想から2年かかりました。そこから何社か回ったんですけど、僕の絵本って対象年齢が なかったから、みんないいねとは言ってくれるけど出版にはなかなか至らなくて。自費出 版しようと思っていたんですけど、結局ある出版社の社長さんが気に入ってくれて。なん とか出版できました。そこから勢いに乗って、運もあって最終的に6冊ほど出版すること ができたんです。

 

おおー!でもそのまま絵本作家になったわけじゃないんですよね?

ーそうですね。最初は絵本だったんですけど、6冊出した後くらいからデパー トで個展を開く機会があったり、反響が沢山あってメディアに沢山取り上げて頂いたり、 全国で組み木絵展を開いたりしたんです。そんなこともあってお仕事もいろいろいただく ようになって。壁画の仕事がきたりしました。病院や学校、老人ホームなどの公共施設に 飾るようなね。カレンダーの絵や集英社の雑誌の表紙の絵を描く仕事も来て。だんだん活 躍の機会が広がっていったって感じですかね。絵本だって僕は絵を描いてただけだし、基 本的には一緒なんです。僕はもともとイラストレーターなんでね。絵描きなんです。「組 み木絵」だって絵の具を木に置き換えただけの話で。自然な流れで「組み木絵」作家にな っていきました。

 

そうなんですね。その流れのまま今に至るって感じですか?

ーそうですね。あと特筆すべき事項といえば海外志向。

 

海外志向ですか?

ーそう。もともと僕は「組み木絵」を海外に持って行きたかったの。その機会 が3、4年前くらいに巡ってきて。知り合いの人が繋げてくれて、パリで個展をやらないか っていう話が舞い込んできたんです。

 

そうなんですね!どうだったんですか?

ーよかったよ。すごくいい勉強になった。最初はパリなんて興味なかったんだ けどね(笑)ニューヨークに興味があったんです。なんとなくですけど。でも、行ってみるとすごかったですね、パリ。「みんなプライド高い」とか言われますけど、確固たる文化の中で生きてるだけなんですよ。「良いものは良い。周りの評価なんて関係ない、自分 が良いと思うかが大事」。そんな素晴らしい文化がある。その文化は日常に、街に、みん なに浸透していて、芸術作品を評価する土壌があるし、見るための場所がある、そして売 る場所があるんです。

 

素晴らしいですね。

ーそうなんです。でもね、その場所にもキャラクターやカラーがあるんです。 僕はカルチャーセンターのギャラリーでやったんだけど、そこは高いものは売れない場所 柄で。僕はレプリカじゃなくて、オリジナルの高いやつを持って行ったんですけど、売れ なかった(笑)時期的にも、僕はまだ向こうじゃ全然知られていないからバカンスの時期 と被ってて、お客さんもあまり来なくて。でも、他の日本の芸術家もそうでしたね。レベ ルが高くて、素晴らしかった。今度は場所を選んで、時期を選んでもう一回勝負してみた いです。

 

では将来的には海外に広げていきたいって感じですか?

ーそれもありますね。でも、僕の目標はシンプルで、最終的には作りたい作品 だけ作れるようになるってことです。それはね、やっぱアーティストにとっては夢です よ。特に日本のアーティストにとってはね。すごく難しい夢。理解してくれて、サポート してくれる人がいないと難しい。僕はずっと一人でやってきたんです。イラストレーター 時代もフリーだったし、絵本だって一人で作った。いろんな人に助けられたから今の自分 があるんだけど、その中でやっぱだまされるようなこと、期待を裏切られるようなことも あって。でも僕の絵を見た人が言ってくれる、「感動しました」っていうような言葉に助 けられて頑張って来れました。でも、ここから先に行くには一人じゃ無理で。最終的には 出会いです。

 

結局はやっぱりそこなんですね、、。最後にくるくるに一言お願いします。

ーさっきも言ったけど、やっぱり日本のアート業界は保守的だし、アーティス トにとっては状況は非常に厳しい。アートはもっとラフなものだと思うんですよね。神棚 にまつりあげるんじゃなくてもっと日常に落とし込んでいくべきだと思うんです。そのた めには、表現をする場としてのちょっとしたギャラリーだったり、情報を共有する場所だ ったり、アーティストをサポートしてくれる場所だったりってのは必要。くるくるはそういう場所として素晴らしいと思いますよ。

 

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